こんにちは、薬剤師/朝活料理講師のマリアです。
毎日の献立を考えながら、「これで栄養は足りているのかな?」とふと不安になることはありませんか?
特に成長期のお子さんがいるご家庭では、
身長や体づくりに直結するテーマだからこそ、余計に気になってしまいますよね。
私も、小学校6年生の息子を持つ母として常日頃気になるテーマです。
今日は、そんな疑問に薬剤師/料理講師の視点からお答えしていきたいと思います。
はじめに|結論:食事が基本、でも「構造的に不足しやすい」栄養素がある

「小学生〜高校生のうちに、少しでも健やかに成長してほしい」
そう考えたとき、まず気になるのが日々の食事です。
サプリメントを検討する前に、多くの保護者の頭に浮かぶのはこの疑問ではないでしょうか。
「そもそも、成長期に必要な栄養は、食事だけで足りるのか?」
結論からお伝えすると、栄養バランスの取れた食事を毎日きちんと用意できれば、多くの栄養素は食事だけで十分まかなえます。ただし、国の調査データを見ると、現代の子どもたちの食生活には、特定の栄養素が「構造的に」不足しやすい傾向があることもわかっています。「頑張って作っているのに、なぜか足りない」と感じる背景には、個人の努力だけではどうにもならない要因があるのです。
今回は、その実態をデータで確認しながら、食事で対応できる範囲と、
工夫が必要な範囲を薬剤師として整理します。
1. 成長期に必要な栄養素と、食品からの目安

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、年齢ごとに必要な栄養素の量が定められています。代表的な栄養素の役割は次の通りです。
| 栄養素 | 主な役割 | 多く含む食品の例 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 骨端軟骨・筋肉・成長ホルモンの材料 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| カルシウム | 骨の材料 | 牛乳・乳製品、小魚、凝固剤を使った豆腐、緑黄色野菜 |
| 鉄 | 血液(ヘモグロビン)の材料、酸素運搬 | レバー、赤身肉、あさり、ほうれん草(吸収率は低め) |
| ビタミンD | カルシウムの吸収を助ける、日光でも生成される | 鮭、さんま、きのこ類、卵 |
| 亜鉛 | 細胞分裂やタンパク質合成、成長ホルモンの働きに関与 | 牡蠣、赤身肉、大豆製品、ナッツ類 |
栄養素だけを見ると「いろいろな食品をバランスよく食べれば大丈夫」という結論になりそうですが、実際の子どもたちの摂取状況を見ると、話はそう単純ではありません。
なお、カルシウム・鉄は「推奨量(推定平均必要量)」で不足を評価しますが、ビタミンDは食事摂取基準では「目安量」として定められている栄養素です。そのため、ビタミンDについては血液中の濃度を指標にした研究が参考になります。
2. データで見る「食事だけでは不足しやすい」栄養素トップ3
一般社団法人Jミルクが2022年に公表したファクトブック「子どもたちに牛乳は必要か?〜小中学生の発育と健康に牛乳が果たす役割〜」では、全国規模の調査結果をもとに、子どもの栄養摂取状況が詳しく分析されています。そこでは「不足や欠乏を予防するための「推定平均必要量」が定められている栄養素では、カルシウム、鉄、ビタミンAなどが摂取不足であり、特に中学生でその傾向が顕著であることが指摘されています。
薬剤師として特に注目したいのが、次の3つです。
1.カルシウム
厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成30年/2018年)」によると、子どもの1日の平均カルシウム摂取量は、男の子で1〜6歳が413mg、7〜14歳が668mg、女の子で1〜6歳が381mg、7〜14歳が603mgとなっています。年齢ごとの推奨量(例:8〜9歳男子で650mg、10〜11歳男子で700mg/いずれも2025年版でも同値)と比べると、多くの子どもが推奨量に届いていない状況がうかがえます。
また、その後の調査・資料でも、給食のない日は約8割の子どもがカルシウム摂取不足になるという結果が示されています。学校給食が、子どもたちのカルシウム摂取を実質的に下支えしている実態がここから見えてきます。休日や長期休暇中は、特にカルシウムが不足しやすいと考えて、意識的に乳製品や小魚を食卓に取り入れることが大切です。
※上記の摂取量は平成30年調査時点の数値です。国民健康・栄養調査はその後も実施されており(令和6年分まで公表)、最新の数値は厚生労働省の公表資料をご確認ください。
2.鉄
株式会社明治が2022年11月から実施している「鉄チェック活動」(1〜5歳の幼児4,414名の血中推定ヘモグロビン濃度を測定)では、貧血の基準値を下回った幼児の割合が5.3%に達し、これはアメリカ(3.2%)の約1.7倍、オーストラリア(2.0%)の約2.7倍にあたります(同社の発表では「約2〜3倍」と表現されています)。日本の幼児は、諸外国と比べても鉄が不足しやすい傾向にあるようです。
なお、このデータの対象は1〜5歳の幼児です。小学生以降の鉄の必要量は増えていきますので、幼児期の結果をそのまま全年齢に当てはめるのではなく、「早い時期から鉄が不足しやすい」というサインとして受け止めるのがよいと思います。
鉄を多く含むレバーや赤身肉、あさりなどは、子どもの好き嫌いが出やすい食材でもあります。「鉄が多い食品ほど、子どもが食べたがらない」という現実的なジレンマが、鉄不足の一因になっていると考えられます。
3.ビタミンD
国立環境研究所の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の研究チーム(熊本大学・倉岡将平氏ら)による追跡調査では、4歳時点でビタミンDが欠乏していた(血中25(OH)D濃度が10 ng/mL未満)子どもは、2歳から4歳までの身長の伸びが、ビタミンDが十分だった子どもと比べて小さかった(年間約8cmに対し7.4cm未満)ことが報告されています。ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける栄養素であるため、不足すると、カルシウムをしっかり摂っていても効率よく骨に取り込めない可能性があります。
この研究では、全体の23.1%がビタミンD不足(20 ng/mL未満)、1.1%が欠乏(10 ng/mL未満)に該当していました。ただし、血中濃度を1回測定した観察研究であり、「ビタミンD不足が身長の伸びを妨げる」という因果関係が証明されたものではありません。日照時間や他の栄養素の影響も考えられるため、結果は「データとしての傾向」として受け取るのが正確です。
ビタミンDは食品からの摂取に加えて、日光を浴びることで皮膚でも作られるという特徴があります。東京慈恵会医科大学の調査(2019年4月〜2020年3月、東京都内で健康診断を受けた成人5,518人対象)では、98%がビタミンDの基準値(30 ng/mL未満)に達していなかったと報告されています(うち約79%は欠乏〈20 ng/mL未満〉)。屋内で過ごす時間が長い現代の生活様式は、大人だけでなく子どもにとっても、ビタミンD不足のリスク要因になり得ます。
※この調査の対象は東京都内の健診受診者(成人)です。数値を子どもや全国の平均として扱うことはできませんが、「日中の屋外活動が減っている」という生活環境の変化を示すデータとして参考になります。
3. なぜ「バランスの良い食事」が実際には難しいのか

栄養素の知識としては「バランスよく食べれば大丈夫」と分かっていても、実際の子育て・共働き家庭ではそれが簡単ではありません。主な要因として、次のようなものが挙げられます。
- 共働き家庭の増加:厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」でも共働き等世帯の増加が示されています。共働き家庭では、日々の食事内容を細かくコントロールする時間的余裕が限られやすいと感じます(この「時間的余裕」の部分は、白書の記述ではなく筆者自身の実感を交えた解釈です)。
- 偏食・好き嫌い:鉄を多く含む食品やビタミンDを多く含む魚料理は、子どもにとって食べにくいことが多く、栄養価と嗜好性が一致しないケースが少なくありません。
- 給食のない日の食生活:前述の通り、給食が果たしている栄養補給の役割は大きく、土日・長期休暇中は特に注意が必要です。
- 屋外で過ごす時間の減少:習い事や勉強で忙しく、日光を浴びる時間が短くなりがちなことも、ビタミンD不足の一因と考えられます(エコチル調査でも、血中ビタミンD濃度が低い子は日中に屋外で遊ぶ時間が短い傾向が示されています)。
これらは、保護者の頑張りだけでは解決しにくい「構造的な」要因です。だからこそ、「栄養が足りていないかも」と感じることは、決して珍しいことでも、保護者の努力不足でもありません。
4. 薬剤師目線:食事で足りない部分をどう考えるか
ここまで見てきたように、多くの栄養素は食事だけで十分まかなえる一方で、カルシウム・鉄・ビタミンDのように、現代の食生活では構造的に不足しやすい栄養素も存在します。
薬剤師としてお伝えしたい考え方の順番は、次の通りです。
- まずは食事の中でできる工夫を:牛乳・乳製品、小魚、青魚、レバーなど、不足しやすい栄養素を多く含む食品を、無理のない範囲で食卓に取り入れる
- 給食のない日を特に意識する:土日や長期休暇中は、カルシウムなどが不足しやすいタイミングだと理解しておく
- それでも難しい場合に、栄養補助食品という選択肢を検討する:偏食が強い、忙しくて食事の用意が難しい、といった場合には、栄養機能食品や栄養補助食品で不足分を補うという考え方も選択肢になります
栄養補助食品をどう選べばよいか、どんな成分に注意すべきかについては、
別の記事で薬剤師の視点から詳しく解説します。
おわりに

「栄養は食事だけで足りるのか」という問いに対する答えは、「多くはまかなえるが、カルシウム・鉄・ビタミンDなど一部の栄養素は、現代の食生活の構造上、不足しやすい」というのが実態に即した結論なのではないでしょうか。
大切なのは、「足りていないかもしれない」と気づいたときに、自分を責めるのではなく、データに基づいて対策を考えることです。まずは食事の工夫から、それでも難しい部分は無理せず別の方法で補う。そんな肩の力を抜いた向き合い方を、薬剤師としておすすめしたいと思います。
参考文献
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成30年/2018年)」※調査はその後も継続(令和6年分まで公表)
- 一般社団法人Jミルク「子どもたちに牛乳は必要か?〜小中学生の発育と健康に牛乳が果たす役割〜」FACTBOOK(2022年10月)/同「学校給食には、食事の提供だけではなく、さまざまな役割がある」(2023年度 全国栄養士大会レポート)
- 株式会社明治「11月26日は『鉄分の日』、子どもの鉄不足に気づく機会を提供する全国1万人『鉄チェック活動』中間報告」(2023年11月22日)
- 倉岡将平ほか「Impaired Height Growth Associated with Vitamin D Deficiency in Young Children from the Japan Environment and Children’s Study」Nutrients 2022;14(16):3325(国立環境研究所 エコチル調査 詳細調査)
- 東京慈恵会医科大学「98%の日本人が『ビタミンD不足』に該当」(2023年6月5日発表/原著:The Journal of Nutrition 2023;153(4):1253)
- 厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療の代替にはなりません。お子さまの栄養状態について気になる点がある場合は、小児科やかかりつけ医にご相談ください。
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